✓実際に認知症だったら…と考えると不安である。
✓物忘れ外来への受診を、どう切り出せばいいかわからない。
こういった悩みや思いに、実録体験をもとにお答えしていきます。
本記事でわかることは下記のとおり。
☑受診前の不安の取り除き方
☑受診の切り出し方
☑診断後のメリット
私の父は若いころから物忘れが激く、高齢になったとき、“老化か認知症か?“の判断がつきませんでした。
娘の私は父の物忘れ具合に異変を感じていましたが、それ以外の周りの人は「年齢によるものだ。」「昔からだから。」と、親身に受け止めてはいませんでした。
本人も何となく自分に違和感を感じ、高齢仲間に物忘れの話題を振っても、「みんなそうだよ~同じよ~。」と同調されることで安心材料としていて、娘の心配する声はなかなか父に届きませんでした。
しかし、実際にその頃から認知症の症状は進んでいて、その数年後に『アルツハイマー型認知症』と診断されました。
認知症は「風邪気味だ…、頭痛がする…、打撲した…。」などの明らかに自分で気が付ける症状と違い、周りの『気付き』が重要になってくると実感しています。
そこで、この記事では、診断に至るまでの数年間の状況を、初めて受診した日から1年ごとに順を追い、物忘れ状況と診断結果について解説していきます。
今、親の物忘れに異変を感じているのであれば、診断された一例として、ぜひ参考に早期発見につなげて頂きたいと思います。
親の物忘れ、老化か認知症かわからない【異変~診断までの体験談】
自分の物忘れと比較すると、「大丈夫?」と心配してしまうレベルの親の物忘れ。
見ていてかなり不安になりますよね…。
私が父の物忘れに異変を感じたのは5年前のことで、当時、受診をすすめていたのですが、全力で拒否されていました。
そんな矢先、父が車で事故を起こし、有無をも言わさず病院に連れて行くことができました。
初回診断は『過去の脳梗塞の後遺症と老化』であると診断。それ以降、年に1度の検査による経過観察となりました。
そして異変を感じてから4年後、『アルツハイマー型認知症』と診断されました。
そこで、その4年間の物忘れの変化について、下記項目に分けてお伝えしていきたいと思います。
✓日常の物忘れの状態
✓診断結果(認知症を調べる:長谷川式テスト)
✓当時のまとめ
初受診
初めて病院を訪れたときの症状は、物忘れが頻発していて、日常の行動にも異変が現れていました。
当時は車の運転をしていて、かなりの不注意をおこしていたので、免許返納の目的も有り受診しました。
●日常の物忘れの状態
- 運転中、赤信号を見落とす。 左右確認が危うい。バックと前進を間違う。
- 風邪ひきで処方された舐めるトローチを、そのまま丸ごと飲み込み、喉をつまらせる。
- 出掛ける前、用意したカバンと違うカバンを持ち出かける。
- 吐き下しの風邪を引いたが、二日後にいつ吐いたのか覚えていない。
- タクシーで道案内時に、左右を間違える。
- 半年ぶりに訪れた、娘の家のトースター(自分の家のものとほぼ同じ機種)の使い方が分からなくなる。
- 自宅からタクシーを呼ぶ時に番地が言えない。
- 「入れ歯がない!」と探していると、自分のズボンのポケットにガーゼに包まれて入っていた。病院の診察室で外したことを忘れていた。
- 薬の管理ができず、飲み方がめちゃくちゃになり、車を運転し朦朧として事故を起こす。
●診断結果
認知症テストの点数 18点
医師からのアドバイスは体を良く動かし、活動的な生活を心がけて下さいとのことでした。
●当時のまとめ
- 短期記憶ができなくなっている。
- 判断力の低下。
- 管理能力の低下。(スケジュールや薬の管理)
2回目の受診
1年後の2回目は、物忘れは1年前と変わりなく、診断結果も良好でした。
医師からのアドバイスは「体を良く動かし、活動的な生活を心がけて下さい。」とのこと。
●診断結果
認知症テストの点数 点数結果なし
この時は、会話の中で意思疎通も取れていて、調子も良好だったため、簡単な記憶部分に関するテストをしましたが、点数は把握していません。
MRI撮影や血流検査はしていません。
●当時のまとめ
1年前と認知や心身の状態に変わりなし。
この1年、医師からの日常生活のアドバイスを実行し、活動的に暮らしていました。
3回目の受診
3回目は、受診直前に肺炎で2ヵ月入院、せん妄症状(意味不明な事を言ったり幻覚を見たりする)を起こし、認知症の薬を処方されていた為、退院後も飲み続ける必要があるのかどうかの判断を聞くためにも受診。
とても心配な状況に感じていました。
●この頃の父の状態
- TV画面を番組表に切り替えた時、なかなか読み終わらない。
- 数日使用している目薬を、なぜか新しい目薬と思う。
- ご飯をよそうしゃもじが、冷蔵庫の中にあると思う。
- 病院で医師の説明を全く理解できない。
- 薬の管理は全くできない。
- たった今しようと思ったことを忘れる。
- 物を置いた場所をことごとく忘れる。
- 物を出したが、しまえない。蓋は開けっ放し。
- 電気をかなりの確率で消し忘れる。
- 牛乳パックのそそぎ口が上手く開けれず、全開させる。
- 自分の高熱に気づかないで、せん妄症状を起こす。
- 自分にイライラしている
●診断結果
認知症テストの点数 23点
私の心配とはよそにテストの点が上がっていて、記憶力を調べる部分では、むしろ良くなっていると言う不思議な状態に。
入院先で処方されている薬も必要はないとの事で、経過観察となりました。
MRI撮影や血流検査はしていません。
●当時のまとめ
- 読書に時間がかかりはじめる。
- 他人の話が理解できないで、違う話をぶち込んでくる。
- 出しっぱなし、開けっ放し、つけっぱなし…と、後始末が50%できない。
- 直前にしようとしたことを忘れる。
私は父の実際の日常の物忘れと、診察時のテストの結果に何とも言えない違和感を感じていました。
4回目の受診
4回目は『アルツハイマー型認知症』と診断されました。
当時の様子は、素人の私が見ても、明らかにおかしいレベルの異変があり、こちらから詳しい検査をお願いしました。
本人も自分で異変を感じ、自ら病院に行きたいと言いました。
アルツハイマーとわかった頃の父の状態について、さらに詳しくカテゴリーに分けて解説します。
●この頃の父の状態
日常生活
- 米洗い担当だが、出した米の合数や、水加減が分からなくなる。
- お茶を沸かし、その場を離れてしまい、吹きこぼすが気付かず席に戻る。
- ガスの点火スイッチが、料理をしていない時に点火の状態になっている。おそらくガスの元栓と間違いひねっている。
- シンクや洗面台の水を出したまま気がつかない。
- 朝起きて次の行動が分からなくなり、しばらく考えパンを焼くことを思い出す。
- 撮影した証明写真を、翌日どこにしまったか分からなくなる。
- 保険証をカバンにしまうも、3分後にはどこにしまったか分からないという。
- 数時間前に話していたことが、他の会話と混ざり話が変わってくる。
- お風呂に入った後、手桶に汚い水を入れたまま出てくる。
- いつも使っている箸が一本どこにいったかわからなくなる。
外出先
- 寒い冬に、飲食店に上着を忘れて薄着で帰ってくる。
- ポケットにはなぜか、知らない人の手袋が入っている。
- タクシーに乗ったが家への道案内ができない。
- 歯医者や病院の予約日を間違いまくる。
- いつも病院帰りに駅からバスに乗るため、道路の向かいにあるバス停を目指すが、道を渡ろうとしたときに、バス停の方向がわからなくなりしばらく考える。
- 通いなれた総合病院の受診受付機や受付、検査の段取り、医師の話の理解など一人では全くできなくなっている。
- 毎回レントゲンを撮っている病院で、レントゲン室までの経路がわからなくなり、「初めて来た。」と言う。
- レントゲン室で、自分の生年月日が言えない。
- かかりつけ医で月1の検尿時、トイレからなかなか戻ってこず、どうしたのか?と聞くと「尿を取り忘れ、絞り出すのに時間がかかった。」と言う。
服用薬
- 夜に飲む薬が机の左端に置いてあるにも関わらず、薬を管理している母に夜分の薬をくれと言う。薬の管理は不可能になっている。
- 毎食後、服用しているが、夕食を食べてもいない5時頃に服用しようとする。なんで今飲むのか訊ねると、「ご飯を食べてからでは忘れる」からと言う。
- 5分間目を閉じるタイプの点眼後、キッチンタイマーで測るも、始動させずに目を閉じて、10分経過してもずっと目を閉じている。時間感覚も低下。
日常使用している物に対し
- 数か月使用しているラジカセの、蓋の開閉が分からなくなる。説明書を見ながら説明するも、説明書の絵と実物を照合することができない。
- いつも使用しているプッシュ式電話がかけれなくなる。番号を覚え押すと言う行動が上手くできず、かけても間違う。
日常の動作
- 全くの他人からかかってきた電話を、家族と思い会話が成り立つ。翌日もその相手から電話がかかってきて、さらに会話が成り立っていた。
- 朝にかかってきた間違い電話に対応するも、翌日にはそれがいつかかってきたのか分からなくなる。
- オレオレ詐欺対策の合言葉を決めても、その合言葉を覚えることができない。
- 数日前にしまったへそくりを、どこにしまったかわからなくなる。本人は、封筒に入れ本の間にはさんだと言ったが、出てきたのはベットの下の引き出からで、透明のビニールに入っている状態だった。
- 開けている窓を「閉めて」とお願いした時、シャッターを下ろし始めたので、「窓だけを閉めて」と伝えると、次は窓は開いたまま鍵だけを閉めたので、「大きな窓を閉めて」と伝えるとようやく閉めることができた。
- 近所の回覧板を、どこに持って行けばいいのかわからなくなり、近所の人に聞きまくる。
- 本人がランニングシャツを着たというが、ランニングシャツは一枚も持っていないし着てもいない。しかし本人は脱いで洗濯機に入れたと言う。
●診断結果
認知症テストの点数 12点
記憶の部分のテストが、ほぼ出来なくなっていました。
かなりの低下が見られたので、血流の検査とMRI撮影を合わせて診断しました。
MRIでは、海馬事態の縮みはなく、脳全体が萎縮。
血流検査においてはアルツハイマー特有の、血の流れの悪さが現れる箇所に、躊躇に流れが悪い事が確認できました。
結果、画像での海馬の縮みの確認はできなかったが、血流には顕著に現れているので、アルツハイマー型認知症との診断がくだりました。
●当時のまとめ
- 物事の流れが順序だてられない。
- あとかたずけがほぼできない。
- 新しいことは全く覚えられない。
- 色んな話が混ざり勘違いがふえる。
- 自分の生年月日をわすれる。
- 昼寝の回数がやたらに増える。
これらは、徐々にと言うよりは、結構急激な感じで起こりました。
脳の血管がつまったのでは⁉と思うほどした。
1人で行動させることは危険になっていて、転倒し骨折したり、家で火を使用しないでと言っても、大丈夫だと言って言うことを聞いてくれず、家族ともめるようになっていました。
昔の脳梗塞の後遺症より、一歩進んでる感が否めなかったので、自ら検査を依頼しました。
受診前の不安の取り除き方
老化現象なのか、認知症なのか…悩んでいるのであれば、思い切って受診したほうが、その後とてもスッキリします。
もし、認知症だった場合、知らずに過ごせば徐々に進行してしまいます。
しかし、診断でわかれば手の打ちようもありますし、進むべき方向もわかります。
何もなければ、それで安心です。
私の父は診断がくだりましたが、その後はメリットの方が沢山ありました。
認知症とわかったことで、本人は認知症が進むまいと日々努力をして生きていますし、服用を開始し1年経った今、父は診断時よりもイキイキと過ごしています。
そして家族は父の物忘れ行動に理解ができるので、イライラしません。
自分の親が認知症だなんて信じたくもないですし、知りたくない気持ちや不安もわかります。
しかし、万が一『認知症』と診断されても、物忘れに対しての心構えや対処法を知り、理解し納得して暮らせる未来の方がよほど安心ですので、前向きな気持ちで受診してもらいたいと思います。
受診の切り出し方
物忘れでの受診は、普段は馴染みのない病院になるので、本人が物忘れに対して何も感じていなかったり、不安があったり、まだまだ大丈夫だ!と思っていると、話を切り出しにくいと思います。
実際、父も1回目と2回目は、『自分は大丈夫だ!』と行くことを嫌がりました。
前章で述べたように、1度検査をして、「何もなければ、それで安心だから。」と言う部分を切に訴えて、「とても心配である。」と言うところも伝えてみてください。
物忘れの原因がわかれば、医師もアドバイスをくれて、対処法がわかりますし、なにより安心できます。
診断後のメリット
診断された後には、メリットがあります。
受診前は我が家の場合、母が父の忘れ物のしりぬぐいに、うつ病になりかけていて、私も父に思いが届かずにケンカになっていました。
認知症と診断され、進行を遅らせる努力に意識が向いたり、周りも接し方がわかり暮らしやすくなっています。
本人は自分の脳に負けまいと、アクティブに努力しながら日々を過ごすことで、かなり脳に良い刺激になっています。
いくつになっても何事もあきらめることなく、努力することや前向きな気持ちを持つ事が、とても重要であることを私が教えられました。
あとがき
親の物忘れ具合が気になり始めたら、何か大きな事故や事件につながることも考えられますし、とても心配になりますよね。
実際、私の父も間違い電話で、誰ともわからない人を息子と間違え、普通に会話が成り立っていたので、オレオレ詐欺だったら簡単にダマされるなと思いました。
家族だけの合言葉を決めても『覚えられない』と言う最悪の状態ですし、それでも本人が『大丈夫!』と言い張ることを黙らせるのは、周りの気付きと診断しかないと痛感しています。
親の物忘れに異変を感じるのであれば、ご家族が笑って過ごせるよう、ぜひ参考にできる部分をとり上げて頂き役立ててければ幸いです。